デジタルアンプ恐るべし ― 2024-08-17
これまであまり信用していなかったデジタルアンプですが、先日お借りしたFosi TB10Dを第二世代電で鳴らすとかなり良い音が出たので可能性を感じ興味が湧きました。付属のスイッチング電源では音の立ち上がりだけは鋭いのですが、給電そのものがデジタルなので結局音はガサついてダメダメでした。
しかし第二世代電源で駆動すると見違える音になりました、その変化は通常のアナログアンプの良さを超えている部分も確かにあると思いました。そこで、自分でも作ってみようと思い、密林でTPA3255Aを使った基板を探して購入しました。
デジタルアンプの元気の良さを引き出すには立ち上がりのよいトランスが必要です。そこでトランスはカニさんに特注でつくってもらい、ケースはコンパクトに納めたかったのでタカチの23cmのヒートシンク付きモデルを選びました。
第二世代部品は手持ちの都合もあって次の構成
B24A22HV2+主コンデンサ3300uf+サブコンデンサ5600uF+LC-6003H+コンデンサ2200uF+CP-3006HC
鳴らしてみて必要があれば追加することにしてまずはこれだけで構成してみました。
できあがった写真が次の2枚です。
アンプ基板が選んだケースにピッタリとは収まらず、床面にあるヒートシンクのレールが邪魔して床面に直接足を立てることができなかったので、3Dプリンタで作った下駄を履かせて固定してあります。

これまでのメイン(Duo x 2)パワーアンプの上に載せてますが、その小ささがわかりますよね。これでトランス容量から150W程度までは出せるとおもいます。
完成までの音出しでは、我が家のモニタースピーカ(試験用機 NS-3MX)に繋いで音出ししましたが、あまりの良い音にしばらく聞き惚れていました。
いざ完成してからメインのスピーカー(ブリロン1.0SLE)に繋いで鳴らしてみました。
ブリロンが若返ったような立ち上がりの良さ。ピアノもバイオリンもヴォーカルも実に見事に再生してくれます。
臨場感も余韻も見事です。
デジタルアンプは出力波形を測定してみると常にデジタルのキャリア周波数がスピーカーラインに出ています。
前回のFosiTB10Dは630KHzでしたが、このアンプは453KHzでした。これはTPA3255を使うモードによって変化するものですが、デジタルアンプである以上ゼロにはならないのでしょう。その量は0.5V程度の信号ですので微小です。ですからこの高周波が聞こえる人にはうるさいかもしれませんが、私の耳も体もノイズとしては感じません。それよりはデジタルアンプの音のリアリティの方が何倍も優れています。
電源さえちゃんとしたものを与えてやれば見違える機器は多いですが、デジタルアンプほど化けるのも珍しいでしょう。
デジタルアンプをスイッチング電源で駆動してはいけません。
今回作ったこのアンプ、部品代だけだと80000円程度です。
こんな費用でこんな素晴らしい音が出せる。。良い時代になったものです。
まさにデジタルアンプ恐るべし。。
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info@practsoundsystem.jp 岡本
デジタルアンプ2台目を製作中です ― 2024-08-26
構成は1台目と同じですが、お試しとして下記にトライしています。
今回のようにアンプ基板がある場合にそれをケースに入れてまとめようとする時、何が大変かというとなんといってもケースの加工です。
フロントパネルはLEDとボリュームだけですから丸穴二つだけでいいのでドリルで簡単なのですが、背面は入出力コネクタという複数の丸穴の他に、電源ソケットという角穴を開けなければならないのです。角穴はハンドニブラーが使えればまだいいのですが、今回のケースはパネルの厚さが2.5mmもあるためハンドニブラーが使える範囲(1.5mmまで)を超えており、そうなるとドリルで連続打ちして四角の内周を落としてからひたすらやすりで削って仕上げるという地味で苦労の多い加工をしなければなりません。このケースのパネルには保護シールすらはられてませんので、こういった手作業での加工は想定していないようです。
ケースメーカに加工を依頼することもできるのですが、1個のためだけであってもそれなりの費用がかかりますし、、しかも正確な図面を出して依頼しなければなりません。
自分だけのアンプであればこそ、そんな費用はかけたくありません。
そこでやってみたのが、手持ちの3Dプリンタで前後のパネルを製作することです。
どのみちコネクターの配置設計などは毎回作成するので、今回はBlenderで3D図面をおこして、そこからSTIでデータを吐き出して3Dプリンタに読ませました。
材料はPLAの黒です。元の板厚が2.5mmでしたが、樹脂で作成するため強度を考え3mm厚としました。長い間には環境によっては加水分解する材料ですが、壊れたら作ればいい、、と腹を決めてとりあえずやってみました。
写真はできたパネルにコネクタ類を取り付けた状態と、手前にあるのはオリジナルのパネルです。
3Dプリンタの印刷物の表面には独特のプリント縞ができますが、光の加減で目立たなかったりしますので、使う分にはあまり気になりません。アルミのオリジナルのパネルより相当軽いですが、感触としては結構しっかりしています。
リアパネルのコネクタの緩みが心配ですが、ウチのスピーカーケーブルはすべてバナナプラグ(SteinMusic製)をつけてあるので大丈夫ですが、繰り返し抜き差しをする入力用のRCAコネクタにはいずれ緩みが出るかもしれません。この辺は使ってみて判断しようと思います。
一般のアンプであれば、入出力コネクタの近傍で共通アースをとってノイズの発生を防ぐという手法がとられるのですが、樹脂製のパネルを使う場合は本来は別途しっかりしたアース線を敷設する必要があります。ただ今回のデジタルアンプについては、スピーカラインが+ー両極ともフローティングしており、それぞれが独立したアンプ構成になっているためこれは必要ありません。
また、1号機はミュート回路がついていたものを利用していませんでしたので、電源の入り・切りでわずかにポップノイズが出てました。今回遅延回路を設計して追加し、使い勝手を向上させました。先にこの回路は1号機にも入れました。
さて、
今回何故2台目のデジタル・ステレオアンプを作ったか、ですが、第二世代電源で駆動するデジタルアンプの音があまりに素晴らしいので、ウチのメインシステムと比べてみたくなったというのがその心です。ウチのメインシステムはSteinMusicのハイブリッド・モノ・アンプであるDuoを2台でステレオアンプにし、そのステレオアンプを2台でバイアンプ構成で鳴らしているのです。しかもDuoにはA電源,B電源、半導体回路用電源と3つの電源にフルに第二世代回路をいれており重装備です。4台で合計12セットもの第二世代電源をいれています。これに対して実にシンプルな第二世代電源(1回路)だけで「これは!!」という音が出たデジタルアンプを、同じバイアンプにして比較してみたいのです。
この試聴記はまた次に書きます。
第二世代電源のサンプル回路などは当店のHPへ
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コネクタの悩み ― 2024-08-28
当店のブログを見た複数の方から、中華製デジタルアンプ用の電源を作って欲しいという、ご依頼をいただいております。
ぜひ提供したいのですが、ここに大きな悩みがあります。
中華製に使われている5521、5525というコネクタは日本では定格電流が2Aまでと定められており、メーカー側もその規格で作っています。そのため抜き差ししやすという便利さの反面、接触不良で過熱しやすいという危険もはらんでいます。
特注カニトランスと第二世代電源で私が構成した電源は定格6A、最大8Aまで流せる電源です。通常の音量での豊かな臨場感の再生にはこの位の余力が必要です。
大きな電流を流せる5521を探したら、日本ではなくて中華製で3A定格ののものがありました。購入してみましたが、抜き差しが素手ではできないほどに硬く、しかも抜き差しするたびに差し込み側に強めの傷が付きます。これは使い物になりません。
ですから当店では中華製パワーアンプのコネクタに合わせた電源ユニットは提供できません。
当店では通常このような用途には七星や三和コネクタ研究所の、ネジ固定式の定格5Aや7Aというコネクタを使っています。この2社は日本にある世界的なコネクタメーカーです。
ただこれらの大電流コネクタはそれなりに高価です。
今回私がデジタルパワーアンプ1号機を計画したときにも、電源ボックスを分けてコネクタ接続にしようかと検討しましたが、レセプタクルとコネクタを合わせた価格がデジタルアンプ基板の価格と同じか近い値になってしまうため、汎用電源として構成することをあきらめ、ケースを少し大きめにしてワンボックス内にした、という事情があります。
同じケース内であれば太いケーブルも使えますし、コネクタの不安も無く、間違いなく良い音を保証できます。
是非パワーアンプの製作・購入をご検討下さい。
当店ではカニトランスと第二世代電源、ミュート回路、ケースの機械加工、配線、組み立てを含めてデジタルパワーアンプ1号機同等品を完成製品としての販売を計画しております。
注文生産で価格は税込12万円以下を予定しております。
よろしくお願い致します。
info@practsoundsystem.jp
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デジタルアンプをバイアンプ構成で試聴 ― 2024-08-29
コンパクトなアンプ回路は有利です。
何が有利かって、信号転送路が短いだけにノイズや電磁誘導で誘引される歪みが入りにくいのです。旧来のアナログアンプは素子間を配線で繋ぎますのでどうしてもそれらのリスクが高くなります。ですからオペアンプのように電子回路網にまとめてあれば有利ではあるのですが、それを突き詰めると使用するオペアンプによってアンプの音が決められてしまうというデメリットも生じます。
ノイズの影響を受けにくいのがデジタルアンプです。デジタルアンプは信号が最後に音に変換される部分に至るまでデジタルですからほとんどノイズの入る余地がありません。ただし、供給される電源にノイズや電流欠損があるとデジタルアンプといえども音が濁ります。だから、デジタルアンプに電流欠損や整流ノイズの無い第二世代電源で電源を供給することは、音の再生の理想構成と言えると思います。
前回、デジタルアンプ1号機を作ってみてこの思いを強くしました。
考えてみれば、無線だってデジタル無線になって音がすっかり変わりましたよね。昔のタクシー無線はなれた人でないと聞き分けられないほど音が歪んでいましたが、今のタクシー無線はデジタル化されているので実に明瞭に聞こえます。これと同じ事で、ソースを受けたところから転送系、再生系のすべてをデジタル化することは著しくノイズと歪みの低減になります。つまり、アナログとは別次元の音になるということです。
この流れがオーディオの世界にも浸透してきたのです。
その昔、某社が「デジタルだから音が良い」というCMで、CDやデジタルオーディオ機器を大々的に宣伝してましたが、そこで再生された音はかつての真空管アンプとレコードの組み合わせにまったくかないませんでした。CDの音はレコードを掛けた時の音の臨場感や余韻はまったく出ていませんでした。
その後、クロックの改善で音が良くなることを学習し、配線長を短くするか、出来ない場合はラダーにすることで音が改善されることを学習し、電源を改善して電流欠損やノイズを無くす事でさらに音の余韻や臨場感が改善されることを学習してきました。
そのうち、いかに高精度なクロックを使っても聴感上は変わらないという飽和点のようなものがあることも学習しました。中途半端な高精度クロックを入れるより、クロックの電源を分離して独立給電とする方が音的には遥かに効果がありました。そういうこともあってか、最近のデジタルオーディオ機器ではDACチップの近傍にDACチップ専用のクロックを設置しているものが多くなり、構成上はかなり改善されてきています。
こうやってオーディオの歴史を振り返ってみると、デジタル音源が出てからいろんな改善を経て現在に至っていることがわかります。デジタルの使いこなしをオーディオ業界が学習し成熟してきたということと思います。
コンパクトにデジタルで音の良いアンプをまとめる。そこには良質のトランスと第二世代電源を内蔵して電源供給する。これはある意味、デジタルが浸透してきた現在のオーディオ・シーンにおけるアンプシステムの一つの到達点と言えるものと思います。
前置きが長くなりました。
実際にバイアンプ構成で聞いてみました。
実にいい音です。臨場感も余韻も見事に再現されています。音の立ち上がりも素晴らしく、低音のキレも抜群ですし高音域の伸びも素晴らしい。どこまでも妥協の無い解像度です、長く浸っていたい音です。とても良い音であることは間違いがないのですが、少し聞いたらCPMの容量をあげてみたらどうかとか、あるいは入力段に現在使われているオペアンプ(TL072)を、最近話題のMUSEに替えてみたらどうかとか。色々やってみたくなる音でもあり,
可能性を感じる音です。
この明るくて解像度の高い臨場感は、Duo x 4台のバイアンプシステムより定位はしっかりしていると感じます。モノラル4台でのバイアンプ構成は全ユニットの特性を揃えないと定位が決まりませんが、その難しさが無くてピッタリ決まる気持ちよさがあります。
もう少し煮詰めればウチのメインシステムにもなり得る可能性を秘めています。
このアンプに興味のある方、1号機を試聴用にお貸し出しします。
お問い合わせください。
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