S.M.S.L SU-1 について2024-11-10

S.M.S.L SU-1について

当店ではタイトルにあるコンパクトDACを選定し、フルチューンしてss120の貸し出しセットに含めています。
このDACは外部から電源を入れる必要がなく、電源はパソコンからのUSB給電だけで動作するUSB-PD機ですが、USB-PD FixCurrent+CPMsp で接続してもまだまだ音の輪郭がボケていて耳障りでした。
それなのにどうしてこのDACを選んだか、その理由と、どのようなチューニングをして耳障りな問題を解決したかを以下説明します。

1)なぜこのDACを選んだか、音がよくなる素質をもっていたから。それは以下の理由による。
1.デジタル回路とアナログ回路がきっちり分けてあった。
2.制御、デコーダ、USBとそれぞれにクロックが内蔵されていて、しかもそのクロックを
使用する素子の直近におかれている。
3.DACがAK4493SEQ、出力段バッファがOPA1612Aといういずれも優秀な音楽用チップが使われている。これは素子への電源を改善する細密チューンで対策可能と見込んだため。

回路解説


2)チューンの方針と内容
最終段のオペアンプには基板中央部にあるスイッチング電源から±12Vが供給されているが、この電源が最悪なのでまずこれを改善する。すなわち、この電源ラインにLCMを入れて減衰側のノイズをカットし、CPMを入れることで加算側のノイズをカットするという細密チューンをプラス電源、マイナス電源の両方に追加する。また、DACチップはスイッチング電源とは別の3.3Vで駆動されている。低電圧のため減衰側のLCMを入れることは困難であるが回路の電源部に入れてあるコンデンサにCPMをパラ接続することで加算方向のノイズだけはカットすることができるのでこれを採用する。というのも3.3Vはレギュレータを使って外部電源の5Vから作られているが外部電源はUSB-PD FixCurrent+CPMspで減衰側のノイスが一応カットしてあることから良しとした。回路に入ってから加算されるノイズをカットするだけでもかなりの効果があるだろうと見込んだ。
=> ここでいう「減衰側のノイズ」とは電源がスイッチング周波数により切られて途切れ途切れになることを指し、「加算側のノイズ」というのはスイッチングパルスによりヒゲ状に伸びて電圧範囲を超える方向のノイズのことを指す。

とりつける部品は次の6個。オペアンプ電源のプラス・マイナスにそれぞれLCM1個とCPM1個で計4個。DAC電源の右と左にそれぞれCPM各1個で計2個。右のボールペンと比べてもらうとどのくらい小さいかわかると思う(13x13X6mm)

ミニCPM&ミニCLM

3)チューン手順
1. LCMを取り付けるための電源パターンのカットをする。この写真はスイッチング電源から+12Vと-12Vのラインを切った状態の写真。スイッチング電源の右側のラインが切ってあるのがわかるだろうか。

LCM用パターンカット

2. LCMは回路に直列にいれてその出口側にコンデンサが必要である。そのコンデンサを入れた写真。セラミックコンデンサで容量は0.1μF
Cap追加

3. 次に基板にLCM、CPMを乗せる場合には、微細な基板パターンに配線をつながなければならないため、LCMやCPMについている硬い足をそのまま接続することはできない(やれば必ず基板を破損する)
このためLCM、CPMの接続点には細くて柔らかい配線を繋いで出しておいて、その先にLCMとCPMを接続する作業となる。このための配線出しを完了した写真が次の写真。使った配線は0.2mmのテフロン被覆銀メッキ線。

LCMCPM用配線出し

4  LCMの取り付けを完了した写真

途中通電確認

5. これらの作業をする際、ハンダゴテは比較的高温にして短時間で接合する必要があるが、念の為次の写真のように放熱クリップで配線を挟んで熱がCPMやLCMに及ばないように工夫する方が良い。次の写真はオペアンプ用の素子を取り付け配線している際の、共通アースラインを接続しているところの写真

半田付け要領

6.  オペアンプ周りの部品の取り付けが完了し、通電して試聴確認している写真
ここまででも十分な解像度と余韻と滑らかさがでているが、まだ音に少し角がある。
OPA完了試聴中


7.DACへのCPM取り付けまで完了し、全ての部品の取り付けて、表面を耐熱絶縁テープで保護した状態
作業完了

ここまでの取り付けで予想通り十分な滑らかさと角のとれた音がでるようになった。明瞭で高解像度ながら一切の耳障りがなくとても上質な音である。上下の音の伸びも気持ちよく低音のキレと力感も十分である。
もちろん、この感想はあくまでUSB-PD FixCurrent+CPMsp 経由で繋いだ際の感想である。

このチューニングに使用した部品は次の通り
1.CP-0603HC @3300円   x 4個
2.CP-0703H  @3300円   x 2個
3.0.1uFセラミックコンデンサ(村田) @50 x 1個
4。0.2mm テフロン銀メッキ線 少々
5.耐熱絶縁テープ 少々

部品総額 19,850円

作業をご自分でなさる方からの質問には全てお答えします。わからない点はどんどん質問してください。その際、ご自身のお名前だけは記載くださいね。最低限のルールです。

当店でも作業をお請けします。
SU-1をお持ちの方には部品代+作業費でチューニング一式3万円でお請けします。
USB-PD FixCurrent+CPMsp ともどもよろしくお願いいたします。

とにかく、中華DACは電源が最悪です。
このDACはぜひ良い音で使って欲しい。

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岡本