失敗と成功? NS-3MX ― 2025-07-03
失敗と成功
ウチの作業用スピーカーであるYAMAHA NS-3MX。作業用とは書いているが常に机の奥側に置いて聴いている。バランスの良いスピーカなのだがもう少し高域の抜けが欲しいかもとも思っていた。たまたま中を開けてみたらなんとシングルコーンスピーカーなのにフィルタ回路が入っていた。これは想定外。どうやらレンジ全体を落とした上で相対的に低域だけを持ち上げるような工夫がしてある様子。試しにこのフィルター回路をバイパスして鳴らしてみると、高域に偏って低域不足の音しかしない。
ただその高域の音は実に綺麗な澄んだ音である。またこの状態だと卵の効果も抜群に出る。しかしこれでは高域に偏りすぎてやはり癒される音にはならない。このフィルター回路は12cmのホワイトコーンを一発でフルレンジに鳴らすための工夫である事は明らか。これでモニターとしてもそこそこ使える音質を確保しているのだからヤマハさんの技術力偉い。位相ノイズキャンセル素子であるSPMDを入れた際の効果の度合いが少し少ないかなと思っていた理由も分かった。フィルタ回路にコイルが入っていたからだ。このスピーカー、普通に聴く時は十分な臨場感が出るが、深夜に極小音量で鳴らす際の臨場感が少なかったのだ。(コイル実測0.72mH)

さて、これを改善するにはどうするか、目標としては次の2点
1)高音の延び・抜けを改善したい。
2)SPMDの効果を最大限に得たい。
そこで試してみたくなったのが、12cmフルレンジユニットと交換したらフィルタも要らなくなるので1)も2)も解決するのでは、ということ。
調べてみたらFOSTEXのFE126NV2がビス穴までピッタリだったので思わずコイズミ無線さんでポチった。

交換してみた結果、確かにSPMDの効果は抜群なのだが、いかんせんやはり低音が出ない。それと高音部に嫌な滲みがある。このFotexのホワイト・コーンはヤマハのホワイト・コーンより分割振動が得意ではないようだ。価格を考えればやむなしか。まぁ、9Lのバスレフが推奨されているところに3MXxの箱は5L少々しか無いのでもともと低音は無理だった。いずれにしても今回のユニット交換は失敗。
まずは元に戻した。
次に、LCRフィルタ構成をよく見ると、抵抗は容量を稼ぐために全て10Wのセメント抵抗が使われていて、コンデンサは50V4.7μFの電解コンデンサが使われていた。音の抜けをよくするにはこれらをもっと高品質なものに交換してみたらどうかと思った。
やったことは次の3点
①抵抗を同じ容量のメタルクラッド抵抗に交換
②コンデンサは日立製6KV/4.7μFのフィルムコンデンサに替えた(友人から昔譲り受り受けた。実測でも4.7μFを確認)
③スピーカー内部配線にSPC-AVを使った
これで試聴してみたら、おぉ、いい感じ。やっと高域がスッキリ抜けるようになった。
どのみち自分の耳の周波数感度など限度があるのだが、ちょっとその上限に近づけた周波数までエネルギーを供給できれば聞きやすくなると思っていたが、その通りになった。
半世紀前のプリアンプ ― 2025-06-30
半世紀前のプリアンプをチューンしました。
1979年発売の、DENON製PRA2000をチューンさせていただきました。
かつての名機と言われたアンプで、レコードをかけると解像度の高い明瞭な音がします。長岡先生も愛用されていたとの事で、このアンプのヘッドアンプならびにイコライザアンプに惚れたものと思われます。
ノイズ対策をすると共に第二世代電源の実装をさせていただく事でお預かりしました。
このプリアンプは、トランジスタ回路でありながら±75Vという高い電圧でメインアンプ部が駆動されています。当時のトランジスタの一番美味しいところを使って作られているとは思いますが、ちょっとした電圧バランスの乱れがノイズにつながります。これを第二世代電源化するとなると、ノイズ対策の他に各部の高電圧回路が耐えられるかという問題も考えねばなりません。第二世代整流回路は一般のブリッジ整流回路に比べて整流効率が高いため数ボルト高めの電圧がより元気よく負荷回路に流れ込もうとします。長い間一定の電圧以下で運転されてきた回路が、急により高い電圧にさらされるとそのショックで故障してしまうこともありますし、調整点が変わってノイズが出ることもあります。というか、今回も実際にそのような事象が発生しました。
今回それらの現象を一つ一つ潰し、全体のノイズレベルを極限まで下げるチューニグを行いました。
故障が発生した部品は同じものを入手しなければなりませんが、半世紀前の設計品なのでかつてのトランジスタを見つけるのがまず苦労しました。また、今回故障が発生した素子とコンプリメンタルの素子が故障していない場合も劣化を想定して交換対象としたため交換部品数が増えました。
いずれにしましても完成したこのアンプは素晴らしいヘッドアンプ回路とイコライザ回路を内蔵しています。かつてのLPをかけるといつまでも聴いていたい音になります。
このアンプに刺激され、当店のレコード再生環境も見直しを図りました。
当店手持ちのプリメインアンプ(PMA1500R:フルチューン)にも一応MC/MM切り替え式のイコライザアンプを内蔵していています。本体の電源を第二世代電源にフルチューンしてあるのでそこそこの音はしていましたが、同じDENONの 50年前の高級機PRA2000(フルチューン)には全く敵いません。PMA1500Rは 1998年の製品なので、その頃すでにイコライザ回路はおまけ的な要素になっていたものと思われます。まぁ価格帯が全く異なりますしね。PRA2000は50年前に85000円でした。その翌年某電機メーカーに就職した店主は初任給の手取りが8万円以下だったことを記憶しています。PMA1500Rは確か7万円弱の製品でした。当店がPMA1500Rを使っているのは、UHC-MOSを使っていて余裕持ったパワーアンプ構成が、第二世代化した際に本領を発揮してとても良い音がしているからです。
PMA1500Rのレコード再生を見直すために、まずはMM/MC切り替え式のイコライザアンプを出川式イコライザアンプに入れ替えることとしました。基板は谷岡電子製のイコライザキットです。これに当店の細密チューンを施して、PMA1500Rのイコライザ部の電源と入出力を横取りして入れ替えます。オペアンプには手持ちのMUSE02を使いました。
入れ替え前イコライザアンプ基板

基板を追加して配線を横取りする予定
イコライザ回路のアースラインも見直してノイズ対策を行い、まずはMMカートリッジで聴いてみました。
ストレートで明瞭な実にいい音です。しかし繊細さがやはり少々欠けています。ここから先はヘッドアンプをつけてMCでの再生に切り替えていきます。ヘッドアンプも出川式で、電流をより多く流せるように特製された2SK389のカレントミラー入力に定電流駆動回路を組み合わせた専用設計品です。基板は届いていますが、ケース・電源を別置きで作りますのでこの内容は継続で後ほど報告します。
しかし、かつてのLPレコードを聴いていますが、音いいですねぇ。海外出張を繰り返す暮らしから戻ってみたら時代はCDに変わっていて、その時にその音があまりにひどい音だったことが当店を始めたきっかけでした。当時、CDの音をなんとか改善しようとあれこれチャレンジしたものでした。悩めば悩むほど、いろんなことが見えてきたので面白かったです。
それに、、若かったし。。。
SPMD-6Fヘッドホンアダプタセット ― 2025-06-24
SPMD-6F ヘッドホンアダプタ セット
位相ノイズキャンセル素子であるSMPD-6Fをお試しいただけるヘッドホンアダプタ・セットを用意しました。
このセットはJVC製3.5mm=>2.5mm変換ケーブル(CN-233A)の途中に位相ノイズキャンセル素子SPMD-6Fを左右個別に入れたものです。入り口側が太い3.5mmのメス、出口側が2.5mmのオスになってます。お手持ちのヘッドホンジャックが3.5mmでも2.5mmでも使えるように、2.5=>3.5の変換アダプタを2個同封します。
普通にヘッドホンを繋いだだけでも少しは改善されますが、最大の効果を得るためには、スマホか音楽プレイヤーなどのバッテリ駆動モデルと繋ぎ、CD以上の品質の音源で音楽を聞いてください。
スピーカーに対する位相ノイズがキャンセルされ、高音から低音まで解像度が改善されて音が明瞭になります。特に低音のキレと力感が格段に向上するのがわかると思います。その効果がオーディオシステムのスピーカーセットでも得られる効果です。そのようにお考えください。
携帯用ではない一般のオーディオシステムに繋ぐ場合は再生システムに第二世代電源(出川式電源)が実装されているか、全体をバッテリー駆動している場合でないと最大の効果は出ません。
なお本品は販売品ではありません。試聴完了されましたら、ユーパックや宅急便などトレース可能な方法で送り返してください。こちらからは宅急便コンパクトにて発送します。
このアダプタで効果を確認したヘッドホン(店主手持ちのものだけ)
YAMAHA HP-1
半世紀前卒業で寮を出る先輩がくれてった。上品な音質。なかもとさんありがとう!
AKG K157
何年か前に友人からもらった。明るくて好ましい音
DENON AH-D5000
気が向いて買った。重いし、音質が好みではないので使ってない。
UG 900S
形状が耳にフィットするイヤホン。比較的高解像度でスッキリした音。
SONY WI-1000XM2
海外移動時のジェット音のノイキャン用として買ったが音が良くて今一番のお気に入り
試聴時の機器は次の構成(上から下に接続)
@音源:MacMini(音源はAppleMusic)
@接続:USB-PD FixCurrent+CPM
@DAC:SMSL SU-1(フルチューンド)
@接続:SPC-AV(ラインケーブル)
@PreMainAmp:PMA-1500R(フルチューンド)
PMA-1500Rのヘッドホンジャックに接続
WI-1000XM2だけはBluetoothでiPhoneと繋いでの確認
以上
SPC-AV とバイアンプ(訂正) ― 2025-06-16
SPC-AVとバイアンプ 配線方法の注意点(訂正)
私はリスニング装置本体のアンプにはss600Dを使っており、作業机の試験用アンプとしてはss120を使っている。いずれもSPMD-6F、SPMD-10FとSPC-AVを組み合わせて倍音の美しい臨場感を得ている。
今後随時、SPMDxxxという一連の素子を「卵」、SPC-AVというケーブルも含めた位相ノイズキャンセルシステムを「卵システム」と書く。
先週土曜日朝に思い立って久しぶりにバイ・アンプを試してみたくなった。ブリロンの配線を高音側、低音側でわけて上をss120、下をss600Dに接続してその臨場感を確認した。そうしたら何故かいつもの臨場感が出ない?? あれ、と思ったが土・日はお客様の機器のチューニング作業があったためあまり真剣に取り組まずにBGM程度に流していた。「そのうち改善されてくるか」などと安易に考えていた。
日曜日の午後、お客様の装置が完成していざ本格試聴する段になった時に、バイ・アンプ側の臨場感の無さが気になった。おかしい、うちではアンプの内部配線もケーブルもSPC-AV+SPMDにしてあるので確実に効果があるはずなのが。。。。
そこでやっと気がついた。SPC-AVの長さが高音側は2Mペア、低音側は3Mペアで繋いでいたのだ。失敗であった。以前ラダーケーブルでバイ・アンプをやった時はこのような長さの差があってもそれなりに改善されていたから忘れていた。SPC-AVとSPMDを組み合わせて倍音再生ができるようになった現在は第二世代電源とラダーだけしかなかったあの頃と比べて臨場感の質が違う。時間軸情報を再生する範囲と精度が格段に向上していることを忘れていたのである。倍音を再生して上質な臨場感を得るには時間軸情報はものすごく大切である。それは実音ではなく倍音部分にこそ含まれる。
気がついてからバイ・アンプをやめてss600Dシングル・アンプに戻した。やはりこの臨場感は間違いがない。ss600Dはこのところずっと3mペアの卵システムでブリロンと繋いでいた。
このことはSPMDを入れたアンプでSPC-AVを使う場合には、その長さを揃える事に気をつけなければならないとはっきり示している。
当店のSPMDと組み合わせたSPC-AVの音は時間軸を正確に再生するから倍音が美しく再生される。たとえソロの楽器演奏であっても、会場内の音の伝わりまでをも再生するのでその臨場感はまさに凄い。その凄さを得るには、例えばバイ・アンプにする場合は上・下のSPC-AVの長さは同じにすべきである。またアンプとスピーカーの配置でアンプをどちらか片側に寄せて設置しなければならない場合などでも、できれば左右のSPC-AVの長さは同じにしておかないと、倍音の再生できるエリアがかなり制限されてしまう、ということである。SPC-AVを使う際の注意点として挙げておく。
また、SPC-AVには厳密な方向性があることにも注意が必要である。必ず上流から下流に向かう方向で接続しないと音がスポイルされる。
6月18日(水)補足と追記
16日家に帰ってから同じスピーカーケーブル長でのバイ・アンプを試してみた。
やはりしっかり卵システムの効果が出る。素晴らしい臨場感。しかしシングル・アンプでの卵システムと比べてどうなんだ?。
実際のところあまり差を感じない。どちらも眼前に素晴らしいステージが広がることには変わりない。バイ・アンプにしたからと言ってさらに立体的になるかというと、、微妙かなぁ。。
システムをバイ・アンプにするには第二世代電源でフルチューンしたプリアンプを入れて、ラダー以上のラインケーブル2セットで上・下のアンプに繋ぐ。音量はプリのボリュームで調整する。もちろんパワーアンプも2台必要で、しかもそれは同一機種でどちらも第二世代電源でフルチューンして揃えておかなければならない。SPMD-10FのついたSPC-AVも2セット必要だ。そういう手間と機材をかけてやるわけだが、それをやり遂げても気持的に以前ほどの充実感が無い。卵システムが入ったシングル構成の臨場感と大差ないのである。
卵が入る事でスピーカーへの信号が精度高く入るようになり、アンプ2台による分担の効果というものが薄れたと言えるのかも知れない。
アンプが2台になることでどうしても接点やコネクタが増え、それらをすべて同等以上の品質に保たなければならないのでより構成管理の手間が増す。少しでも特性に差があったりコネクタの接触不良があったりすると臨場感に影響する。むしろそちらの気遣いの方が精神的な負担になる。
つまり、シングル・アンプですでに大きなメリットを得ているのにわざわざ分けて接点や誤差が入る可能性を増やす意味がない、とすら感じる。それほどに卵システムの効果は大きい。
卵システム無しのバイ・アンプですでに安定した臨場感を得ている方は、卵システムを入れるからと言ってわざわざシングル・アンプに戻す必要などないが、当店では常にはシングル・アンプで様々な機器を繋いだり試験したりしているので、それに手間をかけてバイ・アンプにすることに以前ほどのメリットは感じない。
シンプルなスピーカーを第二世代電源を搭載してSPMD-6Fを内蔵したウチのアンプ1台で駆動し、SPMD-10Fを付けたSPC-AVで繋いで鳴らす。それが精神的にも楽でかつベストな構成。スピーカーやオーディオシステムという概念を超えて、演奏家のステージ世界の再現となる。
SPMD-6Fはアンプ内部においてプラス・マイナス個別に小卵を入れるもので、抜群の効果がある。それに加えてスピーカラインにおいてもSPMD-10Fを左右それぞれに入れてやることでよりステージ世界が近くなる。
これまで世の中に無かった臨場感に包まれて音楽が楽しめる。至高の癒し。
SPMD(卵)はどんなスピーカーなら効くのか? ― 2025-06-10
SPMD(卵)はどんなスピーカーなら効果が出るのか、という問い合わせをいただいている。
大前提として、
欠損のない電流で駆動された増幅システムであることが最低限の条件である。
つまり。。
A)家庭用であれば出川式電源でDAC、プリ、メインがドライブされていること。
家庭でもオーディオ電源をバッテリーにしてる人がいるらしいがそれもOK
B)カーオーディオは点火系ノイズを対策した直流でドライブできていること。
C)スマホであれば、多分OK。バッテリー駆動なので一番簡単に効果を得やすい。
下のスマホのところに詳しく説明する。
これらの条件が揃ったところで、次にスピーカシステムであるが以下A) B) C)それぞれのケースで説明する。
A)家庭用なら============================
①フルレンジ・シングルコーンなら必ず効果が出る。バックロードホーンを含む。
スピーカー自作愛好者には朗報。
②2ウエイの場合、上下をコンデンサだけのネットワークで分けてあれば効果が出る。(店主のブリロン1.0SLEなど)
コイルが入っていてもそれが1mH以下など十分に小さければ可能性があるが、
その場合は効果の度合いが小さい。( 店主のNS-3Mxなど)
③3ウェイ以上のマルチユニットの場合
マルチユニットの場合は内蔵ネットワークにコイルが使われていることが多いと
思われるのでそのままではおそらく効果は出ない。
デジタルチャンデバで分けてマルチアンプ構成にし、各スピーカーをそれぞれ
パワーアンプと一対一で接続している場合は効果がある。
④効果が確認されている一般市販品のスピーカー
1)B&W ノーチラス801
2)ダリ・オプティコン6
3)AudioPhysic ブリロン1.0SLE
4)ALTEC サンタナ
5)Fostex20cm フルレンジ など
その他
6)PSD T4 Limited Special(ネットワークレス・カスタム品)
=>要は、よりシンプルな構成のスピーカーシステムほど効果が出る可能性が高い。ネットワークに凝ったものは良くない。ネットワークレスがベスト。
B)カーオディオなら============================
マルチスピーカをコイルネットワークで分けている場合は効果無し。
コイルを介さずにアンプとスピーカーが直接接続されていれば効果がある。
C)スマホなら=================================
有線接続ヘッドホンで音を聞く場合はヘッドホンまでの線に卵を入れれば効果がある。
ブルーツース接続でも一部のBTヘッドホンの様にアンプ部とイヤホンが有線接続
されている場合は効果大。 (写真は私のWI-1000XM2)
Appleイヤーポッドのようにワイヤレスの場合は卵を入れられないので効果なし。
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