Switching電源魔改造 音楽用になるか?2025-03-30

 フランスのお客様から励磁電源用の電源を第二世代で造ってくれとの依頼。
励磁スピーカーの励磁電源は50V/230mA程度だが、安定させる必要があり、かつ電流を
一定にしてほしいとのこと。つまり電流一定制御である。
励磁コイルは通電しているとある程度温度が上がるので抵抗値が増えて電流が減る。さらには音楽信号が入るとボイスコイルと協調して誘導電流も発生し変動する。
それらを電流制御で維持してほしいとのこと。

50Vを中心に電流をみながら電圧を調整して常に一定電流を流す。そのような可変閉ループ制御は造る敷居が高い。しかし、第二世代電源でそれをやるとなると断るわけにはいかない。

そこで検討したのが電流・電圧を一定制御できる可変電源を使って音楽品質の直流安定化電流を出せるものは造れないか、ということ。

試した装置は密林で1万円以下で販売されているSTP6005Dというスイッチング式の可変電源。
STP6005D
この装置は60Vまでの電圧範囲と5Aまでの電流範囲を持っている。フルで使うと300Wのアンプの電源にもなる可能性がある。励磁電源用には電流はそこまで要らないが、まずはこの装置のフルレンジを第二世代化してみようと思ってチャレンジ。

まずスイッチング回路に入る前の一次整流器、これは余裕のある8A(800V)のブリッジダイオードが入っていたがこれを取り外して交換。B80A350HV2にしてそこにメインコンデンサと補助コンデンサを200Vのものでそれぞれ100uFと200uFで1対2にしてやり、一次整流回路を理想の電源に交換。
(フランスは230V電源であるが、今回は動作確認のため国内電源でまず造っている)

次にスイッチング電源の出口にCP3010HCとLCM12003Hを追加して場所が狭いのでとりあえずコンデンサは追加せず、一応完成とした。

ここで波形観測。スイッチング電源の出口に励磁コイルと同じ225オームの抵抗を繋いで
その抵抗両端で波形観測。(波形データはクリックで拡大できます)
STP6005D出口電圧波形

初段整流器第二世代化
(A)が改造前の波形、(B)が第二世代に改造後の写真 左右はサンプリングが10ms/divと20usec/divで2枚
いずれもノイズがかなり少なくなっているのがわかる。

これなら、と思い試験用のss120にアナログ電源の代わりに入れてみた。
Switching+ss120
その結果、余韻もよく出て解像度も高い。ただ少し高音域が出過ぎていてやかましい。
たぶんこれはスイッチング部分のノイズが取りきれていないものと判断し、再挑戦。

出口側のCPMを大きめのCP15006HCに交換し、さらに第二世代電源の出口側と同じく、LCMを二つのコンデンサで挟むように追加し、200V1000uF+ LC12003H+200V470uF  の流れとした。これでコモンモードノイズとノーマルモードノイズの両方の対策ができるhず。とにかくスイッチング電源はノイズが多いので出口側の素子類は容量の大きなものでしっかり構成してやった。
大容量LCMCPM
その結果、高音部の耳障りがなくなりいつものss120の音になった。
やはりスイッチング電源を第二世代電源の品質にまで改善するには相当手間とお金がかかる。。が、
今回のように電圧・電流制御回路を使いたいような場合はこのような手法もあり、という話。
音質改善完了後
最後にもう一度波形観測(C)。条件は前回2回と同一。この画像を比べても一つ前の(B)との差異が見えない。音の良さの領域というものはこれほど実波形には出ない部分であるということを痛感して完了。




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