Fosi のデジタルパワーアンプとFixCurrent、第二世代電源など2024-07-21

最近音がいいと評判のデジタルパワーアンプ、Fosi TB10Dをお借りして電源を替えながら試聴・測定してみました。
Fosi TB10Dと電源アダプタ
まずFosi付属のACアダプタで試聴です。
確かに元気のよい音ではあるのですが、なにぶん濁りがあり音量をあげると耳障りです。
まぁスイッチング電源の音とはこんなもんでしょう。
これにFixCurrentを入れると音がスッキリ晴れ渡り、余韻もかなり出てきます。
まだ音にすこし角がありますが、気持ちのよい元気の良さです。
さて、それでは波形比較です。
次の波形がFixCUrrentの前後での電圧波形比較です。小音量で再生時の電圧信号を測定しています。Ch1がACアダプタ出口(=FixCurrent入口)、Ch2がFixCurrent出口です。ほぼ1ミリ秒ごとに大きなパルスがあって電源が暴れていることがわかります。電源電圧がこのようなパルス状になっている時は供給先への送り出しが途切れ途切れになっていることを示しています。FixCurrentを通るとほぼ一定に安定して給電されているのが分かります。
これでFixCurrentで供給すると音がよくなることはわかりますが、ではスイッチング電源の給電ってどれだけよくないのでしょうか? (オシロ画面はクリックで拡大できます)
FixCurrent前後比較
実際には電圧測定ではスイッチング電源の欠点はよく見えないのですよね。そこで、アンプへの流入電流を測定してどのような電流がFosiに供給されているかみてみました。

次の波形は音楽を再生している時のスイッチング電源からの入力電流波形です。
SW出口電流波形
スイッチング電源の周波数でパルス状に大きく暴れています。よくみて欲しいのは、この測定のトリガはゼロボルトにしてありまして、波形のゼロは画面の縦中央です。中央の線より下にある部分は電流が逆方向に流れていることを現しています。つまり供給される側から見れば電源電流が途切れ途切れになっているのです。通常のスイッチング電源はパルス給電ですのでこのようになります。これでは余韻もなにも再生できることはなく、雑味のあるやかましい音でしか鳴りません。
これをFixCurrentを通した後の電流波形は次の波形です。
FixCurrent後電流
綺麗にほぼプラス側に安定して振れています。つまりほとんどの電流欠損が補われて連続して給電されています。
これがFixCurrentの効果です。これで滑らかで余韻のある、気持ちの良い音が再生できます。

また、今回はA&Rの第二世代電源アダプターキット(¥61000.税別)もお借りして繋いでみました。この電源の出力波形は言わずもがなですが、一応次のものです。
第二世代キット出口電圧波形
綺麗なもんです。

そして、やはり第二世代電源で鳴らすこのアンプはとても良い音がします。
デジタルアンプにもやっぱり第二世代電源は必須ですね。

DS200試聴記その5(チューン記録その2)2024-06-28

前回はDS-200のDACチップの電源ラインにLCMを入れたのですが、基板に比べてLCM素子がかなり大きくてそれ以上の部品はつかない状態でした。また、オペアンプの電源にもLCMやCPMを付けたいところでしたが、その電源回路が基板の裏にあるためケースとの隙間が狭くて部品を入れられませんでした。つまりやりたかったチューニングが半分以上できない状態でした。

それを見かねた出川先生が小型のCPMとLCMを作って送ってくださいました。
次の写真が標準のLCMと小型のCPMの比較です。

MiniとNormal
標準のCPM,LCMのサイズが 25mm x 20mm x 10mm = 5cc
ミニCPM,LCMのサイズは  12mm x 12mm x 5mm = 0.72cc
容積比約7分の1という小ささです。
電流容量は小さいのですが、このような省電力基板には十分です。
このような小さな部品を小さなパターンに半田づけする場合には、コテ先を小さいものに
交換して作業します。
 kotesaki


早速アナログ基板に実装してみました。
基板の表側にあるDACチップの給電ラインに、LCMを3個とCPMを2個取り付けました。
DAC給電ラインに部品追加


また、この大きさなら基板の裏側にもなんとか付けられます。
ケースとの隙間いっぱいにはなりますが、半分無理に押し込んで次のようにオペアンプの
給電ラインにLCMを2個とCPMを2個取り付けました。それぞれプラス側とマイナス側です。


基板裏側

これでようやく女性ボーカルの色気がでてきました。艶かしい口の動きと余韻。
包まれる臨場感と厚みのある音。。
当店のメインDACにも比肩できる音になりました。
コンパクトDACでこれだけの音がだせれば間違いなくHighC/Pと思います。

当店にはもう一台コンパクトDAC(S.M.S.L SU-1)があり、こちらの基板にも同じ
チューンをしましたが、電源がバスパワーであることと、小さな1枚の基板に全てが
まとめてあるためでしょうが、完全にDS-200に凌駕されてしました。
昔から電源は分ければ分けるほど音がよくなると言われています。デジタル回路を
内部に持つようになった最近のオーディオ・ユニットは、その辺の電源や回路の作り方が
大きく音を左右することが伺われます。電源を分ければそれだけ体積も増えますので、
やはりある程度の大きさは必要ということでしょう。

あと、DS-200について一つ訂正があります。以前、専用ドライバが必要と書いていましたが、最近のWindows11ではDS-200はbravoのドライバを入れなくても(つまり繋いだだけで)全ての機能が利用できます。
もちろんMACでは最初からそのままで全機能使えてますが。。



DS200試聴記(その4:チューン記録その1)2024-06-17

小型DACであるDS200が、フルチューンしてある当店のメインDACにどこまで近づけるかやってみたくなりました。
当店のメインDACは、CS8416+CS8421+PCM1798という基本構成に、電源はデジタル回路、アナログ回路、サンプリングレートコンバータ回路+クロック用電源と4つの電源をそれぞれトランスから分けて第二世代電源で作ってあります。さらに内蔵しているDACチップやオペアンプなどの主要部品にはその全てにLCMとCPMを奢っており、これ以上無いほどに電源部を作り込んでいます。その結果として、懐の深い豊かな臨場感に包まれる音が再生できています。女性ヴォーカルなどは実に艶かしいです。

これに対してDS200には第二世代1系統だけで給電してるだけでしたから、音が良いとは言っても臨場感や音の深さなど、当店のメインDACとは比較になりません。

内部回路にまで手をいれればさらに改善されるのはわかっていましたが、あまりにも筐体が小さく、また、半田付け先も極小であることからこれまで諦めてました。そうは言ってもこちらもSA9226+PCM1975という定評のある構成ですからかなりの音が出せるはず、とも思っていました。

今回内部のスペースを良く検討したところ、苦労すればなんとか入れられるかもと思い立ちトライしました。最低でも入れたい部品はLCMで、入れる場所はDACのアナログ電源(3箇所)とオペアンプの電源(2箇所)の計5箇所です。

チューンはソース側から、の基本通りにまずはDACチップに入れてみました。
PC1798にはアナログ電源が(左・右・共通)と3つ個別に引き込まれています。
次はDACアナログボードの写真です。
この写真の真ん中にDACチップがあり、赤丸で囲んだエリアにLCMの配線を組み込まなければなりません。

給電ラインはどれもチップコンデンサを素子直近に配置してしてあり、それを経由して給電してあります。そこで、チップコンに至る電源ラインをカットして、その点とチップコンの間をLCMでバイパスするように接続します。LCMは回路に直列にいれなければならないのでこういう手間がかかります。
これらをつけただけでほぼ、基板のスペースが無くなりました。
また、オペアンプはこの写真のLCMの真下にありますので、基板の表側からの配線は物理的に無理です。しかし基板裏はケースとの隙間が2mm程度しかないため何も入りません。
よって今回のところはここまでとして一旦組み上げ、動作確認と試聴をしてみました。

いや、びっくりです。
良くなることはわかっていたのですが、こんなに効くとは思いませんでした。低音のキレ、高音の立ち上がりと伸び、余韻や臨場感も格段に改善されました。ただ、チップの特性か少し当店のマスターDACより音が固めです。そしてやはり女性ヴォーカルの艶かしさはまだまだ出てこないです。
でも、この大きさでもここまでの音がでる。それは本来のチップの音ですね。

こうなるとやはり後段のオペアンプにもLCMやCPMをいれたくなっねしまいますね。。。
また少し考えまてみます。やればやるだけ良くなるので楽しいですが。。。



!!ご注意!!
今回の加工はDACチップ直前の基板パターンをカットしてそこに配線を繋ぎこむという「強引で細かい作業」です。LCMの半田付け先もチップコンの端子ですので、一歩間違えば基板を故障させます。ですから、半田付けや細かい作業に慣れておられない方は絶対に真似しないでください。例えば、チップコンに熱を加えすぎるとそれ自体が外れてしまいます。そうなると手半田では2度と取り付けられなくなります。コテの当て方が悪いとDACチップを破損してしまうこともありえます。

当店としてもこのような細かいチューニング作業はリスクが高くてお受けできません。
あくまで店主の実験として自分のDACでやっているだけであることをご理解ください。



最近の問い合わせと波形観測結果など2024-06-16

MJ誌の夏号に当店のADを掲載しました。
当店のメールアドレスばかりでなく、私の携帯電話番号も載せてあるためか、いろんな電話がかかってきます。
その中でちょっと説明に困ったのが、「うちのアンプは低音や高音が伸びないのだがお宅にチューニングしてもらうと出るようになるのか」といったような内容です。
ホームページにも書いていますが、当店のチューニングは機器の電源を改善することで音の解像度と純度を高めることです。それの結果として、これまで濁っていて聞こえなかった最高音域や最低音域が明瞭となることはあるでしょうけど、再生機器本来が持っている周波数特性や音のキャラクタを変えるものではありませんので、お客様が思っていらっしゃるような「周波数範囲の拡大」はできるとは言えないです。
オーディオの音の良さをどうしても周波数特性でだけ評価しようとする方々が多くて、ちょっとびっくりしちゃいますね。当店のチューニングは電源のチューニング。。というか、電源を本来の「電流欠損のない」電源にするというチューニングです。そうやって機器が持つ本来の音を再生できるようにするのです。

第二世代電源がなぜ音が良いかの証拠を、測定波形でご覧に入れましょう。
スイッチング電源で使うことが前提の中華製ヘッドホンアンプがあります。
これの電源入力ラインにDALEの無誘導抵抗(5オーム/5W)を直列に入れて、その両端の電圧波形をとります。外から入れるのはDC12Vの「ACアダプタ(スイッチング電源)」と、私が「第二世代電源で構成した直流電源」、そして最後に、「ACアダプタの先にFxCurrentを追加」した電源です。
これが測定方法です。白いワニクリップはアース・グランドです。微小電圧を測定するため外部からのノイズを極力受けないように測定系をグランドに落としています。左下から来ている黒いラインの先には受けコネクタをつけてあり、ACアダプタ出力と第二世代電源出力を差し替えられるようにしています。測定機器はHANTEKの安いデジタルストレージオシロですが、プローブだけは高級品(テクトロニクス製:TDS460付属品)です。これを使わないとゼロレベルが安定しませんでした。

以下、測定波形を示します(波形はクリックすると拡大もできます)
これが「ACアダプタ(12スイッチング電源)から給電」した波形です。ノイズが全体に乗ってますが、大事なところは波形そのものが時間軸に対してかなり粗密のばらつきがある(要はスカスカ)ということです。これは流入電流に欠損が生じていることを示しています。

次に示す「第二世代電源からの給電」と比べてみてください。
二つの波形のレンジは高さも時間軸も一緒です。第二世代電源では時間軸に対して非常に密にならんでいて、きちんと電圧レベル(つまり流入電流)がとぎれなく確保されていることがわかります。

最後に、ACアダプタの先にFixCurrent5521を繋いで測定した波形です。
ノイズレベルは第二世代電源ほど小さくなりませんが時間軸方向の密度はほぼ第二世代電源と同じくらいに緻密に並んでいます。これがFixCurrent5521の効果です。
でもやっぱり第二世代電源にはかなわないですよね。

全てのオーディオ機器は第二世代電源で供給してやらないと機器本来の音が出ませんし、あるはずの音の滑かさは出てきません。



S.M.S.Lの超小型DAC2024-04-28

XMOS製のRISCであるXU316を採用しているという、768KHzまで対応の超小型DACを買ってみた。

S.M.S.LのSU-1という機種。
惹かれたのが
1)DD部分がRISC(超高速演算)であること
2)DSDネイティブ再生が可能であること
3)外部給電が不要でUSB-PDだけで動作すること
4)AD変換には旭化成のプレミアムDAC,AK4493SEQが使われていること
5)1万円そこそこで買える安さ

専用に設計されたRSICによってDD変換を行っているということは、パソコン等によるそれにくらべて時間遅れなどは皆無に等しく、ほぼ一瞬(1インストラクション)でデコードされるということ。こういう構成であればノイズによる影響も出にくい。しかもUSBPDであるので、ひたすらUSB経由の電源だけを意識してやればいいい。つまりFixCurrent+Inlineという構成でUSB内の信号と電源を清浄化してやればデジタル的には理想的、という見込みがあった。
注文して一週間で届いた。

一聴して音が良いことがわかった。
オーディオデコーダとして販売しているが、AD後のバッファにもL49720という高速・高精度・低歪率でドライブ能力も高いオペアンプが使われている。つまりDAされた音声データを劣化させることなくプリアンプに出力できるこということであり、DACとして望ましい。

Macにはドライバ無しで繋がるし、WindowsでもドライバをインストールするだけでDSDを含めフルレンジで使える。DS-200のような再生ソフト側での設定が不要なので使いやすい。
もちろんハイレゾもDSDも無理なく楽しめる。
確認してはいないがMQAも再生できるらしい。

最近はデジタル系の進歩が凄いと思う。
シガレットケースサイズのSU-1