ss600Dsp版の温度対策 ― 2025-12-21
ss600Dsp版の温度対策
ss600Dに、お客様からのご要望で1KVAのカニトランス(ZR1000)を載せた事は前に書いた。それで音の出方が大きく変わり、大きなステージが感じられるような、ゆとりのあるなり方になった事も書いた。その時からあれ?と、思ってはいたのだが、内部温度が以前より高めだった。その時は周囲が寒くなって来たから余計に目立つのかな、くらいに思っていたが、納入先のss600Dspがオーバーヒートで停止するという事象が発生して対策が一気に必要になった。
同じ電圧でトランスの容量が大きくなっただけでなぜ発熱が増えるのか、ここにきてわかった。ZR1000を入れて何が変わったかというとステージ感が大きくゆとりあるように鳴るようになったことと、それまで聞こえなかった音までが聞こえるという事実。ステージ感が広がったということは時間軸情報がより綿密に再生されるようになり、聞こえなかった音が聞こえるようになったということ。それだけ音に関する情報量が時間軸情報とともに増えたということで、それはつまりそれだけの情報量でアンプを駆動するということになり、それがZR1000の余力の中でたっぷりと電流を必要とする動きであったということだった。つまり、音の密度はそのまま電流量、つまり発熱に直結する。600VAのトランスでは追従しきれなかった音の情報量に対して十分に余力のあるトランスになったことでその全てが再生されるようになった、そういう事であった。
まぁ理由はどうあれ、今回のお客様の使い方だと頻繁にオーバーヒートしてしまうということが判明した。今回のお客様は録音スタジオをお持ちの方で、広いホールもお持ちだ。そのためアンプは我が家とは比べ物にならないほどに音量を上げてお使いで、そういう状況は当店の作業場所のような団地の狭い部屋では確認できていなかった。言い訳になるが、今回のお客様にご指摘いただいた事で製品の熟成が進むと、お客様には感謝しかない。ありがとうございます。さっそく容量のでかい抵抗器を手配し、音を出さなくてもアンプの出力を上げた温度試験ができる環境を整えた事は言うまでもない。
さてその対策だが、アンプ基板を内蔵している構造上、熱源に大きなヒートシンクを後付けする事ができない。やむ無く、出来るだけ静かなファン(AC)を付けて空気の流れを作りそれで冷やしてやることにした。スイッチも一緒に付ければ、小音量で鳴らす場合にはファンを切って運転することもできる。
幸い基板上のヒートシンクはフィンが左右の向きのため、入気口を基板高さの位置の左右に開けて、天井に排風ファンをつければかなりの冷却が可能であると推定した。
ケース左右に開けたスリットは以下の状態。樹脂カバーを3Dプリンタで作って付けてある。この穴でファン規定流量の約50%を確保してケース内を負圧に保つ事で風の流れをつくる方針。
サイドスリット写真
天板は後方の中心に丸穴を開けた。緩衝材を挟んでファンを取り付け、できる限り回転音が出ないようにした。また、天板は前後を入れ替えることもできるように配線を伸ばしたので、アンプを棚に入れるなどの設置環境などでファンを前に置きたい場合も対応できる。
天板写真

当店では当店のアンプ製作前に改造のご注文をいただいた場合には、先にまず自身のアンプにそれを実施して検証している。今回は音量を上げた温度試験を実施していなかったことで温度トリップの現象を見逃した。痛恨の極みである。。。
そこでまず、当店のアンプに冷却対策を実施し、そこで温度試験を実施して検証することとした。本体右脇にちょっとだけ青い線が見えているのだが見えるだろうか?スリットを通してサーモカップルを挿入してあるところである。また、上記の写真は自機で検証した時の写真なのでシルバーの機体である。納入機は黒機体。
これらの対策を実施してからメタルクラッド抵抗を負荷としてほぼ100%の出力での温度試験を実施した。余談だが、100%負荷ともなるとメタルクラッド抵抗からもシャンシャンと音楽が流れる。。。
温度試験というものは環境温度に対して熱源の温度がどこまで上昇するかという差温度(ライズ)で評価するのが常である。今回はアンプ素子が熱源だが、素子そのものに熱電対を貼ることはできないのでヒートシンクの最上部に固定してヒートシンクのライズを測定することにした。
温度試験は私の部屋で、温度測定はサーモカップル(Kタイプ)をヒートシンク直上に設置してテスターに繋ぎ、室温との差を測定した。アンプ回路にはパニック温度150℃でアンプ停止という仕組みが組み込まれている。これがトリップする温度まで上昇させた試験を行う。
環境温度18℃の時にFAN無し(入排気口も閉止)で100%負荷運転すると、ヒートシンク温度がケース内温度と共に上昇し、約90分でアンプが温度トリップした。その時のヒートシンク温度は78℃、ライズは60degである。アンプのケース内容積がかなり大きいためそれらが上昇し、アンプ基板にあるヒートシンクの冷却が効かなくなった時点でアンプ素子温度が急上昇してトリップという現象であった。
同じ環境でFAN冷却を生かすと、ヒートシンク温度は31℃以下で安定した。つまり、100%負荷連続運転でもライズは13℃未満であるので、たとえ環境温度50℃でも温度トリップには至らないということが確認できた。
この後、お客様のアンプを預かり、対策を実施してそれもにも温度試験を実施して確認してから納入した。
翌日、お客様から「快適に動いています」とのご連絡をいただいた。
この一言が何より嬉しかった。
大きなゆとりのある音をお楽しみください。
この後、二人目のss600DのユーザさんからもZR1000への載せ替えのご注文をいただいた。同じ茨城県内なので当店のss600Dspを持参して交換でお預かりしてきた。今はこの装置のトランス入替作業を実施している。
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