整流回路(電源)からのノイズ ― 2025-12-11
整流回路からのノイズ
アンプを作っていると、ノイズ対策が大きな課題となることがある。第二世代(出川式)などの良質な整流回路は必須だが、それらと例えば高ゲインのアンプ基板を一緒のケースに入れるとノイズ対策が容易ではない。
例えば半導体はそれ自体がノイズ源でもある。整流回路など最たるもので、それぞれの部品に半導体を内蔵している出川式電源の部品であっても大小の差こそあれそれ自身も電磁ノイズを放射している。
電磁シールドにはアルミも銅も使えない。厚くしてもそれらはほとんど効果がない。安価で一番いいのは鉄である。ただ鉄も強い磁化にさらされるとそれ自身が伝播路として電磁ノイズを伝える。だからカニトランスにはコア自身が電磁ノイズを放出しないように特別な塗装が塗られてもいる。音楽再生専用トランスとして数々の工夫がされている中の一つの有効な対策である。
コンパクトにまとめようとした当店のss120も最初はノイズ対策に悩まされて今の形に収まっている。問題だったのはss600Dである。いざss120と同じ構成で組み上げたのだが、整流回路が大きい分バックグラウンドノイズも大きかった。そのため最終的にss600Dの内部配置はss120とは大きく変更してあり、ss120では整流回路はアンプ基板のそばに置いていたのだが、ss600Dでは整流回路とアンプ基板の間をトランスで絶縁するような配置にしている。この配置は1KVAのトランスにした時も有効である。
前(左)から順にアンプ基板、トランス、出川式電源と並んでいる。
半導体が発生する電磁ノイズを絶縁できるほどにカニトランスは優秀なのである。もちろんカニトランスといえどもトランスなのでそれ自身もノイズは出すのだが、漏洩してくる場所が限られているためわかりやすくて良い。
さて長々と整流回路からの電磁ノイズ対策について書いてきたが、この種のノイズというのは、そのノイズ発生を嫌って全てのオーディオセットをバッテリーで構成しているという強者もおられるほどに深刻な問題でもある。その方によれば整流回路を全廃しないと静かなオーディオは聞けない、とまで言っておられる・・・そうかな、と私は思う。
バッテリーには種類によってそれぞれ周波数応答が異なり、内部抵抗も高いためオーディオには向かない、という方もおられるが、そんなことを言ったらリチウムイオンを内蔵した携帯プレーヤーが全部音が悪いということになってしまう。だが実際そんなことはない。リチウムイオン電池の環境的な問題はあるとしても、それこそ、バッテリーをきちんと音で確認しながら回路調整をしていけばオーディオの「全バッテリー駆動」というものもありか、とも思う。。。私はやらないが。
横道に逸れてしまった。
何が書きたかったのかというと、整流回路って別置きにできればそうした方がいいかも。という話だ。かなり前に出川先生が苦労して作られた「素晴らしく音が良いMCヘッドアンプ」の基板を購入させていただいた。せっかくなのでこれに当店で細密チューンを施したイコライザアンプ基板をまとめて一つの小さなケースに稠密実装し、電源を別箱に入れて構成してみた。

左の鉄ケースが電源で、右にあるタバコ2個分のアルミケースがアンプ本体
これを先日、出川先生宅を訪問した際に聞いてもらったら同席された皆様から「いい音だ」とお褒めいただいた。ヘッドアンプはゲインが高いためバックグラウンドノイズが高くなりがちでS/Nが悪化しやすいが、別箱としたことで静けさも増していた。
こういう構成もありかと思う。そういう話。
でもね、海外の装置では電源トランスだけを別筐体に入れてコネクタ接続しているプリアンプやそういう電源箱をオプション販売しているDACがある。おそらく、海外のトランスはカニトランスほどの優秀な防磁対策がされているものなどないから、電源トランスの電磁ノイズの方が大きいという意識なのだろうか。しかしそれなら何故整流回路も一緒に外に出してしまわないのかが私には理解できない。単に「電源のバージョンアップオプション」として豪華なケースに入れたトランスを出しているだけなのかもしれないが、まぁそれも商売としてはありか。
と、この記事を作っていたら、三田電波さんから久しぶりにFAXが入た。なんと、来年2月で廃業なさるという。。。ううう。昨年12月にはオーグラインの武藤製作所さんが廃業なされ、今度は発振器の三田電波さんまで。。自動的に大量生産で作れるチップ型の発振器が今は主流だからなぁ。。どんどん、マニア向けの店が減っていく。。どんどん当店が寂しくなっていく。。。
時代は変わる、オーディオシステムもどんどん変わってる、それでもなぜ、市販されている機器の整流回路は良くならないのだ!
スイッチング電源になってさらに悪くなっている。ノイズの塊やん!!... Sigh!!
ss600Dsp版の温度対策 ― 2025-12-21
ss600Dsp版の温度対策
ss600Dに、お客様からのご要望で1KVAのカニトランス(ZR1000)を載せた事は前に書いた。それで音の出方が大きく変わり、大きなステージが感じられるような、ゆとりのあるなり方になった事も書いた。その時からあれ?と、思ってはいたのだが、内部温度が以前より高めだった。その時は周囲が寒くなって来たから余計に目立つのかな、くらいに思っていたが、納入先のss600Dspがオーバーヒートで停止するという事象が発生して対策が一気に必要になった。
同じ電圧でトランスの容量が大きくなっただけでなぜ発熱が増えるのか、ここにきてわかった。ZR1000を入れて何が変わったかというとステージ感が大きくゆとりあるように鳴るようになったことと、それまで聞こえなかった音までが聞こえるという事実。ステージ感が広がったということは時間軸情報がより綿密に再生されるようになり、聞こえなかった音が聞こえるようになったということ。それだけ音に関する情報量が時間軸情報とともに増えたということで、それはつまりそれだけの情報量でアンプを駆動するということになり、それがZR1000の余力の中でたっぷりと電流を必要とする動きであったということだった。つまり、音の密度はそのまま電流量、つまり発熱に直結する。600VAのトランスでは追従しきれなかった音の情報量に対して十分に余力のあるトランスになったことでその全てが再生されるようになった、そういう事であった。
まぁ理由はどうあれ、今回のお客様の使い方だと頻繁にオーバーヒートしてしまうということが判明した。今回のお客様は録音スタジオをお持ちの方で、広いホールもお持ちだ。そのためアンプは我が家とは比べ物にならないほどに音量を上げてお使いで、そういう状況は当店の作業場所のような団地の狭い部屋では確認できていなかった。言い訳になるが、今回のお客様にご指摘いただいた事で製品の熟成が進むと、お客様には感謝しかない。ありがとうございます。さっそく容量のでかい抵抗器を手配し、音を出さなくてもアンプの出力を上げた温度試験ができる環境を整えた事は言うまでもない。
さてその対策だが、アンプ基板を内蔵している構造上、熱源に大きなヒートシンクを後付けする事ができない。やむ無く、出来るだけ静かなファン(AC)を付けて空気の流れを作りそれで冷やしてやることにした。スイッチも一緒に付ければ、小音量で鳴らす場合にはファンを切って運転することもできる。
幸い基板上のヒートシンクはフィンが左右の向きのため、入気口を基板高さの位置の左右に開けて、天井に排風ファンをつければかなりの冷却が可能であると推定した。
ケース左右に開けたスリットは以下の状態。樹脂カバーを3Dプリンタで作って付けてある。この穴でファン規定流量の約50%を確保してケース内を負圧に保つ事で風の流れをつくる方針。
サイドスリット写真
天板は後方の中心に丸穴を開けた。緩衝材を挟んでファンを取り付け、できる限り回転音が出ないようにした。また、天板は前後を入れ替えることもできるように配線を伸ばしたので、アンプを棚に入れるなどの設置環境などでファンを前に置きたい場合も対応できる。
天板写真

当店では当店のアンプ製作前に改造のご注文をいただいた場合には、先にまず自身のアンプにそれを実施して検証している。今回は音量を上げた温度試験を実施していなかったことで温度トリップの現象を見逃した。痛恨の極みである。。。
そこでまず、当店のアンプに冷却対策を実施し、そこで温度試験を実施して検証することとした。本体右脇にちょっとだけ青い線が見えているのだが見えるだろうか?スリットを通してサーモカップルを挿入してあるところである。また、上記の写真は自機で検証した時の写真なのでシルバーの機体である。納入機は黒機体。
これらの対策を実施してからメタルクラッド抵抗を負荷としてほぼ100%の出力での温度試験を実施した。余談だが、100%負荷ともなるとメタルクラッド抵抗からもシャンシャンと音楽が流れる。。。
温度試験というものは環境温度に対して熱源の温度がどこまで上昇するかという差温度(ライズ)で評価するのが常である。今回はアンプ素子が熱源だが、素子そのものに熱電対を貼ることはできないのでヒートシンクの最上部に固定してヒートシンクのライズを測定することにした。
温度試験は私の部屋で、温度測定はサーモカップル(Kタイプ)をヒートシンク直上に設置してテスターに繋ぎ、室温との差を測定した。アンプ回路にはパニック温度150℃でアンプ停止という仕組みが組み込まれている。これがトリップする温度まで上昇させた試験を行う。
環境温度18℃の時にFAN無し(入排気口も閉止)で100%負荷運転すると、ヒートシンク温度がケース内温度と共に上昇し、約90分でアンプが温度トリップした。その時のヒートシンク温度は78℃、ライズは60degである。アンプのケース内容積がかなり大きいためそれらが上昇し、アンプ基板にあるヒートシンクの冷却が効かなくなった時点でアンプ素子温度が急上昇してトリップという現象であった。
同じ環境でFAN冷却を生かすと、ヒートシンク温度は31℃以下で安定した。つまり、100%負荷連続運転でもライズは13℃未満であるので、たとえ環境温度50℃でも温度トリップには至らないということが確認できた。
この後、お客様のアンプを預かり、対策を実施してそれもにも温度試験を実施して確認してから納入した。
翌日、お客様から「快適に動いています」とのご連絡をいただいた。
この一言が何より嬉しかった。
大きなゆとりのある音をお楽しみください。
この後、二人目のss600DのユーザさんからもZR1000への載せ替えのご注文をいただいた。同じ茨城県内なので当店のss600Dspを持参して交換でお預かりしてきた。今はこの装置のトランス入替作業を実施している。
久しぶりのマイクロDAC細密チューン(Topping D10s) ― 2025-12-24
久しぶりのマイクロDACのチューニング
お客様からTopping D10sというマイクロDACの細密チューンのご注文をいただいた。
このところアンプ造りにかかりっきりだったので久しぶりのマイクロDACのチューニングは新鮮な感じ。
このDAC、DACチップはESSのES9838Q2Mという少し前のESS社のナンバーワン・マルチオーディオ・チップを載せていて、出力段にはOP1656を使ったフィルタ回路と最終段のバッファにはLME49720というTi社のオペアンプが使われている。このLME49720はソケットに入れてあり、気に入らなければ交換もできるようになっている。
このようなUSB駆動のマイクロDACをチューニングする際には、USB-PD FixCurrent+CPMを併用することは良い音の最低限の条件なのだが、その上で、各素子への細密チューンを施してやることでそこらへんのン十万円のDACに勝るとも劣らないDACに化ける。
S.M.S.LのSU-1はそうやって化けてその音がL社の60万円のDACにも勝ると評価されているものだが、D10sはどの程度改善されるか、まずは実施してみた。
やったことは出力段オペアンプへのCPM搭載とそれらの電源へのLCM搭載。
それと、DACチップのアナログ回路電源に同じようにCPMとLCMを入れた。
都合ミニCPMが4個とミニLCMが3個である。
これが作業開始前の写真
赤丸内にあるのがアナログ出力段で、左端がLME49720、その右に上下に2つ並んでいるのがOP1656を使ったフィルター回路である。
黄色丸内の小さなチップがES9838Q2MというDACチップ。
チューニング対象はこれら4つの素子。
次はアナログ回路3個のオペアンプにCPMをバラったところ。
アナログ回路用の電源部にLCMを入れ、DACのアナログ電源部にLCMとCPMを入れて一応全部取り付けを完了した図
この後組み上げて試聴した。
うーん良い音。SU-1と優劣つけ難い。じっくり時間をかけて比較すれば細かい違いがわかるのかもしれないが、余韻もレンジも立ち上がりもみんな良くて、細かいこと気にするほどないくらい良い音。
このDAC、面白いことにMacに繋ぐと44.1KHzと画面表示が出るんだけど、Windows11に繋ぐと48KHzと表示されている。Ticの違いかねぇ。どちらもAppleMusic で聴いてみてるんだが。。
この音が出せてチューニング費用は税込33000円。絶対に安いよね。
明日発送。





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